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『アガサ・クリスティー完全攻略』を読んで思い出した、私のクリスティベスト5

アガサ・クリスティは、実は普通小説の方が面白い

『さよならドビュッシー』でミステリー小説に20数年ぶりに触れました。
最近はイヤミスと呼ばれる、嫌な気分になったり、嫌な結末を迎えたりするミステリー小説が流行っているようですね。

『さよならドビュッシー』は、私にとってイヤミスでした。
多分、巷の基準ではイヤミスに当たらないのでしょうが。
嫌なことが多い世の中、小説の中でも嫌な気分になりたくないものです。

とはいえ、謎解きの楽しさを思い出したのも事実です。
何か他にもミステリを読みたくなったのですが、まずはリハビリに安心して読めるものを。
そう思った時、どこかのブログで紹介されていた『アガサ・クリスティー完全攻略』を思い出しました。

以前はアガサ・クリスティーを全冊読破したことがあるほど、クリスティーファンの私です。
他の人と意見は会うものかどうか、試しに読んでみました。

いや、懐かしい。

タイトルを見ただけでストーリーも犯人もトリックも思い出せるもの、あらすじを読んでそうそうそんな話だったと思い出せるもの、なんとなく読んだことがあるような気がしないでもないとおぼろな記憶しかないもの、様々でした。

著者の霜月蒼さんはミステリ評論家だそうですが、アガサ・クリスティがどのような意図を持ってその作品を書いたかなどを推測し、読み応えがあります。
ポワロ⇒ミス・マープル⇒トミー&タペンス⇒その他
と読み進めていくのですが、節目節目で総括としてベスト10を発表しています。

私もアガサ・クリスティのベスト5を考えてみました。
(ベスト10ではないのは、あまりにもブランクが空きすぎて、結構忘れている作品があるので)

1.春にして君を離れ

3人の子供が巣立った平凡な中年女性が、天候不順のため足止めされた中東のレストハウスで、することもないので過去を振り返るだけのお話ですが、とんでもなく恐ろしい本です。

メアリ・ウェストマコット名義で書かれた本書は、ミステリではないので殺人はもちろん、何の事件も起こりません。
ですが、主人公自身でさえ気づいていなかった心の闇を描いた、この上なく恐ろしいサスペンスとなっています。

こんな話を書けるなんて、アガサ・クリスティーはどれだけ自分自身を含めた人間に絶望しているのかと、背筋が寒くなる思いです。
そして、自分の心の中にも主人公と同じ闇があることにも気づかされ、愕然とします。
その闇は深く、誰の心の中にもあり、自分がその闇を行使したことも、行使されたことにも心当たりがあります。

だからこそ、私は本書を何回も読み直します。
その闇を行使していると感じる時に、戒めのために。
特に子供がいる人に読んでほしい本です。子供の魂を殺さないためにも。

2.5匹の子豚

小説で読んだときは特に印象に残らなかったのですが、デヴィット・スーシェのドラマの出来が素晴らしすぎて、大好きになったお話です。

どこか物悲しい音楽とともに語られる、幸せな時代の最後の数日。
繰り返し語られる思い出の会話の本当の意味、殺人を犯している最中の殺人者の非情さ、ラストシーンでの殺人者の悲哀。全てが完璧です。
ドラマの最後の一幕だけは余計だったのが残念です。

3.カーテン

小説で始めた読んだときは、好きになれませんでした。
「ポワロ最後の事件」だけあり、ポワロもヘイスティングスも老いてしまっています。
第二次世界大戦中に書かれたためか、全編を寂しさと絶望が覆っています。
犯人も、今となってはありきたりで、まさかポワロものでこれを使うとは、と怒りさえ覚えました。

しかしデヴィット・スーシェのドラマを見て、評価は一変しました。
初期の短編はコミカルな要素が強かった『名探偵ポワロ』でしたが、長編では暗い作品が多くなってきました。
明るく軽やかな短編から、一転して暗い雰囲気の長編、中でも罪と罰を問う陰鬱な『オリエント急行殺人事件』の新解釈を経て、ポワロ最後の事件『カーテン』で締めくくる。
『名探偵ポワロ』シリーズが全て、この『カーテン』に向けて制作されてきたかのような構成でした。

デヴィット・スーシェの演技も素晴らしく、ポワロのラストを締めくくるにふさわしい傑作です。

4.ゼロ時間へ

殺人が起こる瞬間を「ゼロ時間」とし、そこへ向けて物語が進んでいきます。

「今がゼロ時間なのです」

この言葉に射抜かれました。格好良すぎです。
ポワロ物に時々登場していたもののパッとしなかったバトル警視がついに活躍するのも、ファンとしては嬉しいです。

5.鏡は横にひび割れて

アンジェラ・ランズベリー主演、エリザベス・テイラーも出演した『クリスタル殺人事件』のイメージが強いのですが、配役が私のイメージと違うので、原作はすばらしいけれど通常なら上位には来ない作品。

…けれど、新型コロナウイルスが蔓延し、緊急事態宣言もが発令された今、改めて読みたい本です。
『クリスタル殺人事件』も、今この時期こそぜひ再放送すべき。


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