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『小泉今日子書評集』は透明感のある言葉が踊る書評

私と正反対の感性を持った人

私はこのブログで書評を書いていますが、書評ってどう書くのが正解なんでしょうね?
どうしてもあらすじを追ってしまったり、話が脱線したり、考察ばかりになってしまったり。
ネタバレになっては興ざめだけど、面白さをどうやって紹介したらいいかわからない。

そんな迷いがあって、小泉今日子さんの書評を手に取りました。
彼女は言わずと知れたアイドルで、アイドル卒業後も着実にキャリアを積み重ねている人です。

もう、書いている言葉が、詩。
ここまで違うと、比べる気にもなれません。
私は私の書き方で行こう。
そう思わせてくれました。

全97冊中、私が読んだことのある本はわずか2冊。
私は結構本を読む方なので、ここまで被らないのはむしろ不思議なほどです。
でも、その2冊は、私の大好きな本でした。

何もかも私とは違う人なのに、私の根幹を作った本は被っている。
不思議ですね。

『私の浅草』

『私の浅草』では、小泉今日子さんは次のように書いています。

憧れの女優、沢村貞子さんのエッセイを読んでいると心が落ち着きます。
明治生まれの彼女が育った浅草の街で見た風景、食べていたもの、感じた想いはどれも慎ましくて涙が出そうになります。

私だったらきっと『私の浅草』で描かれている風俗について調べ、「ここで書かれている◯◯はこういう物で…」と解説しそうです。
とはいえ、沢村貞子さんのエッセイは、本当に面白かった。

私の両親は本は好きでしたが、エッセイはあまり読まない人で、実家にあるエッセイは『私の浅草』と向田邦子の『父の詫び状』の2冊だけでした。
沢村貞子も向田邦子もエッセイの名手として知られています。
小学生の頃からこの2冊を繰り返し読んだ私にとって、これがエッセイの基準となってしまいました。

軽く楽しく読めるエッセイはたくさんありますが、心のひだに入り込むエッセイにはなかなか出会えないのが残念です。

『スウィート・ヒアアフター』

ただ一冊の小説を読んだだけなのに、心は私の元にすんなりと戻ってきてくれた。あの優しく不思議な感覚を私はまた味わうことになった。

小泉今日子さんは、よしもとばななの本を、「仕事が忙しくて心がどっかいっちゃった時に手に取ることが多くて、読むと戻してもらえます。」
と書いていますが、私にとってよしもとばななは余裕がある時に読む本です。

理系の私は、余裕がないときはその原因を解決する本を読み漁ってしまい、物理的、科学的に解決しようとします。
そんな時には、小説よりむしろ実用書の方を手に取ります。
小説も読まないわけではありませんが、戦うための士気を高めたり、現実逃避できるような本を選び、よしもとばななの本はまず手に取りません。

よしもとばななの本を読むときは、心に余裕があるとき。
小泉今日子さんは「ばななさんは、少し、私にとって特別な作家さん。」と書いていますが、私にとっても特別な作家です。
よしもとばななの独特な世界観、独特な人物たちは、きっと私が住みたい世界、なりたい人たちなんです。

世界や他人に、自分の気持ちを確かめながら、一つ一つ丁寧に関わっていくこと。
出来事を咀嚼し、自分なりに解釈し、どのように反応するか決める。
そんな風に生きることに憧れます。

数年前、大規模な断捨離をしました。
本も、半分以上を手放しました。
そのとき、「もし本を10冊しか残せないとしたら、何を残すだろう?」とふと考えました。

大草原の小さな家シリーズは外せない。けれどこれだけで、10冊もある。『はじめの四年間』と『わが家への道―ローラの旅日記』を外せば、あと2冊選べる。
『人生がときめく片づけの魔法』はバイブルだから、今は外せない。
あと1冊は、やっぱりよしもとばななの『キッチン』かな…

そういえば、よしもとばななの本を、ここ数年読んでいません。
新型コロナウイルスで家ごもりの生活を送っている今、心には余裕はないかもしれないけれど、こんなときだからこそ、小泉今日子流に心を取り戻すためによしもとばななを読むのもいいかもしれません。
そんなことを考えさせてくれました。

最近の小泉今日子さん

普段ワイドショーや芸能ニュース、ドラマを全然見ないので、「あまちゃん」以後の小泉今日子さんの活動を全く知らなかったのですが、どうやら不倫宣言をしているらしいですね。

『沢村貞子という人』の書評で、次のように書いています。

人を愛する決心。愛される覚悟。本当の意味でそれを知っている女性は、今の世の中にどれだけ存在するのだろう。残念なことに私はまだそれを知らない。

彼女は「それ」を知ったのでしょうか?


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