『地磁気逆転と「チバニアン」』チバニアンは人類の危機を救うかもしれない
地磁気が逆転すると文明社会に大打撃!
「チバニアン」は、2020年1月17日に命名された地質年代で、千葉が名前の由来となっています。
地質年代に日本の地名由来の名前がつくことは初めてのことで、かなり注目されました。
「地質って何?」という人でも、恐竜がいた時代の「ジュラ紀」「白亜紀」という名前を聞いたことがあると思います。
チバニアンはその「紀」よりも二段階細かい区分で、約77万年前~約13万年前を指します。
正確には、「新生代・第四紀・更新世・チバニアン紀」というそうです。
「チバニアン」が注目されたのは、日本の地名が初めて採用されるかもしれない、という以外に、この地層に、「地磁気逆転」が起こった痕跡があるからです。
「方位磁石のN極は北を指す」
この常識が、常識でない時代があったことも驚きですし、逆転するのなら、逆転している最中、磁石はどこを指すの?という疑問もあります。
そもそも磁石は真北を差さない
そもそも磁石は真北を差さないとかいう話を聞いたことがあります。
真北=北極点とは、Wikipediaによれば、「自転する天体の最北端、北緯90°の地点のこと」だそうです。
一方磁石が指す北「磁北」は、真北と1000km程度のずれがあるそうです。
地球から見たら誤差の範囲なのでしょうか?
日本でも方位磁石の北は、真北から4~10度ほど西にずれた方角を示すそうです。
しかもこの角度のずれは、常に変化し続けているのだとか。
このずれを、偏角というそうです。
伊能忠敬は非常に精巧な日本地図を作成したことで知られていますが、なんと、彼が測量をした時代は、偏角がほぼ0だったとか!
そのため、磁石の北はほぼ真北であり、それがあれほどの精密な日本列島を描けた理由だそうです。
もっとも伊能忠敬は偏角の存在を知っていたそうですので、偏角があったとしても、かなり精巧な地図を描けたであろうと言われています。
方位磁石といえばもう一つ、水平にした磁石は、北の方角に向けて沈むのだそうです。
これを「伏角」といいます。
そのため売られている方位磁石は、南側を少し重くして、水平を保っているのだとか。
当たり前と思っている「北」一つとっても、これほどまでに私たちはその実際の姿を知らないのです。
ところで、伏角が大きなエリアではオーロラが見られるそうですが、平安時代末期〜鎌倉時代の日本は、今よりも伏角が大きく、オーロラが見られることがあったそうです。
1204年に京都で山向こうで起きた火事のような「赤気」が見えたという記述がありますが、これはオーロラであることが明らかになりました。
平安時代末期といえば、魑魅魍魎が跋扈する陰陽師の世界というイメージがあります。
「末法の世」と言われ、武士が台頭して混乱した世の中が「魑魅魍魎」や「鬼」を作り出したのかと思っていましたが、案外オーロラが原因だったのかもしれませんね。
なぜ地磁気が存在するの?
地球の内部は、一番外側が岩石からできている地殻、その下がマグマのようなマントル、さらにその下が液体の鉄などでできている外核、一番中心が個体の鉄などでできている内核、と学校で学んだ記憶があります。
なぜ地磁気ができるのかといいますと、ものすごくざっくりと説明しますと、外核とマントルが対流することによって、磁場が発生しているのだそうです。
この働きは「地球ダイナモ」と呼ばれ、現在のスーパーコンピュータを持ってしても完全な再現は成し遂げられていないほど、複雑な要素が絡んでいるようです。
そのため、地磁気の逆転も完全なシミュレーションはなされておらず、不明な点が多々あるそうです。
ところで私たちは幼い頃から方位磁石に親しんでいるので、他の惑星にも普通に地磁気が存在すると思いがちですが、実はそうでもないそうです。
例えば火星は、地球のように地殻がいくつかのプレートに分かれて移動するという「プレートテクトニクス」がないそうです。
その理由として、火星は地球よりサイズが小さいため核が固化したためなどの説がありますが、いずれにせよ地殻の下のマントルの対流が弱いため、磁場も発生しないそうです。
そして、磁場は太陽風から大気を守るバリアのような働きをしているそうですが、磁場を持たない火星では、太陽風により徐々に大気が剥ぎ取られ、火星表面の水も蒸発し、現在のような寒くて乾燥した環境になったと考えられているとか。
ということは、地球に磁場がなかったら大気も水も失われ、今のような生命にあふれる環境ではなかったということなのです。
地磁気逆転って、つまりどういうこと?
地磁気逆転の際は、徐々に磁場が弱まり、磁極が赤道にあったり、「北」と「南」の磁極が複数出現する可能性さえあるようです。
「方位磁石が使えなくなって困ったね」という問題ではなく、非常に様々な影響があるようです。
まず、磁場がなくなると地球を太陽風から守るバリアがなくなるので、太陽風に直接さらされることになります。
太陽風とは、Wikipediaによれば、「太陽から吹き出す極めて高温で電離した粒子(プラズマ)のこと」です。
電離した粒子は電気を帯びているため、大量の電流が送電線に流れ、変圧器が壊されて大規模な停電が起こることがあるそうです。
実際に1989年にカナダで、2003年にスウェーデンで大規模な停電が起こっています。
そのほかにも、通信網にも影響を与えるそうです。
2012年7月23日、1週間前に地球が通過した地点を通常の4倍の速さの太陽風が通り抜けたというニアミスがありました。
もし地球を直撃していたら、電力網と通信網は地球規模で壊滅的なダメージを受け、スマートフォン、タブレット端末、パソコンなどの電子機器も破壊されていたと言われています。
地磁気逆転の際は、この比ではないプラズマが流れ込んでくることでしょう。
しかも、何年も、何十年も。
チバニアンに記録されている地磁気逆転の期間は、約2000年間だそうです。
地磁気極が赤道を通過し、一気に移動する時期は、400年間だったようです。
つまり、400年間地球は非常に無防備な状態になるのです。
そして地磁気を測り始めてから200年間、地磁気強度は一貫して弱まり続けているのだそうです。
地磁気逆転の周期は20万年~30万年だそうですが、最後の地磁気逆転は、チバニアンに記録された77万2900年前。
現代は、いつ地磁気逆転が起きてもおかしくない時期なのです。
しかし、現生人類が生きている間に地磁気逆転が起きたことはなく、記録が残っていないため、地磁気逆転により実際にどんなことが起こるのかは誰にもわからないのです。
最も最近起こった地磁気逆転の痕跡を記録しているチバニアンの研究が進めば、謎に満ちた地磁気逆転の顛末が、人類に解き明かされるかもしれません。
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