<!-- もしもアフィリエイトでかんたんリンクを貼る時、 レスポンシブを有効にするためのタグ-->

『派遣添乗員ヘトヘト日記』業界の裏側はどうして面白いのだろう?

添乗員はつらいよ

学生の頃は、バイトでお金を貯めては毎年海外旅行に行っていました。
あまりに海外旅行が好きすぎて、添乗員になろうかと思ったほどです。
体力と語学力が絶望的にないので、すぐに諦めましたけれども。

本書を読んで、私には添乗員は無理!と思いました。
体力・語学力不足ももちろん一因ですが、何よりもメンタル面で耐えられそうにありません。
ツアー中に起こった全てのトラブルの矛先は、添乗員に向かいます。
不可抗力の事態であっても、企画元の旅行会社の不備であっても。
本書にはそんなトラブルの数々が書かれています。
読んでいるだけで胃が痛くなりそうな事例のオンパレードです。

著者の梅村さんが添乗員となった15年前にはすでに、ほとんどの添乗員が派遣に切り替わっていたそうです。
朝は早く夜は遅い。
日本はもとより海外津々浦々どこにでも出かけて案内しなければなりません。
トラブルが起こるとお客の不平不満の矢面に立たされます。
そんな過酷な職業が派遣とは!

私が盛んに海外旅行をしていた25年ほど前はどうだったのでしょう。
あの人たちも派遣だったのかなあ…?

本書には食事の話が何回か出てきます。
添乗員には食事がつくが、運転手にはつかないため、運転手との間に微妙な空気が流れることもあるそう。
ただし一般のツアーの添乗員の食事は、ツアー参加者の食事とは違うそうです。
一方社員旅行などの受注型のツアーでは、添乗員の食事は参加者と同じものを食べられることが多いとか。

これは、なんとなく知っていました。
海外旅行でも国内旅行でも、添乗員さんが参加者と離れた場所で別の食事を食べているのを見かけたことが何回もあります。
なんか申し訳なくなるんですよね…、あれを見ると。

逆に、あなたが何でそんなに大きな顔して一緒に食べているの、と思ったことがあります。
社員旅行でのことです。
その頃私が勤務していたのは地方の零細企業でしたが、3~4年に1度の社員旅行は海外でした。旅行は地元の零細旅行会社に依頼し、毎回旅行会社の同じ社員が添乗員として同行するのですが、この人がそりゃまあ使えない。
ホテルのチェックインなど現地の人とのやりとりを見ていると、片言の英語で意思の疎通に苦労しています。
一旦現地ガイドと合流すると、ドライバーとの打ち合わせや諸々すべて現地ガイドに任せ、自分は椅子にどっかり座っているだけで何もしません。
乗り継ぎの空港で、搭乗時間に遅れそうで皆で走っている時、空港の職員が「Transfer?」と尋ねているのに曖昧に笑って通り過ぎるだけ。
見かねて私が、「Yes, we will transit!」と叫んで、職員に誘導してもらったこともあります。
なのに食事の時は一緒の席で誰よりもお酒を飲んでご満悦。
仕事ができる添乗員ならともかく「なんだかなー」と思っていました。

旅行のアンケートをとってくれれば「添乗員:不満」の欄に大きく◯をつけるところでしたが、アンケートについては本書に「トルコ人ガイドの大失態」というエピソードがあります。

トルコ旅行で参加者全員が和気あいあいと仲良くなったのはいいものの、現地ガイドがちょっとしたことで参加者の反感を買い、参加者全員と対立したというエピソードです。
ツアーの参加者は旅行後のアンケートでトルコ人ガイドに対する不平不満を書き連ね、かのガイドはその旅行会社に出入り禁止となってしまったそうです。

タイ旅行へ行った際、現地ガイドが集合時間になっても現れず、皆で手分けして探したところ、10分後に別室で寝ていたのを発見したことがありました。
そのガイドはその事件以前から適当な仕事ぶりで、南国の国民性かと思っていたのですが、これはさすがに酷いとアンケートに書いたことがあります。
彼は仕事を失ったのかどうか。失ったとしても他の旅行会社に鞍替えして呑気に働いていそうな気もするのですが、自分の書いたものが他人の人生に影響したかもしれないと、ちょっと気になるエピソードでした。

どうしても人間の性質上、苦情ほど訴えたくなるもの。
本書にも、アンケートで感謝や満足の意を表す人はごく少数で、圧倒的に多いのが苦情、クレームだと書いてあります。
添乗員本人に落ち度がない苦情は今まで書いたことはないと思いますが、感謝をきちんと書いていたかどうか、自信がありません。
これって、日常生活でも大切なことですよね。
正当な苦情は伝えるべきですが、感謝もきちんと伝えた方が、みんなが幸せになるような気がします。

本書にはスーパーバスガイドさんの話が載っていて、ぜひ彼女のガイドを受けたみたいと思わせるほどのスーパーぶりなのですが、私も一度、スーパー添乗員さんに出会ったことがあります。
その人はイタリア旅行の添乗員で、若い男性だったのですが、物腰が柔らかで、知識も豊富。
ツアー参加者とあっという間に仲良くなって、フリータイムにはオススメのレストランに連れて行ってくれたり。
最後は参加者から思わず拍手が出たほど。
20年前のことなので、彼も派遣だったのでしょうか。
彼のツアーにもう一度参加したいと思わせるほど完璧な仕事っぷりだったのですが、今はどこで何をしているのでしょう。
本書の厳しい業界状況を読むにつけ、添乗員を続けていて欲しいような、他業界へ転職していて欲しいような…

コロナ禍の影響で、ツアー旅行は壊滅です。
著者紹介に、『本書がヒットしたら「月1~2回、趣味みたいに添乗員の仕事をしていきたい」というのがささやかな夢』とありますが、今は全く仕事がない状況でしょう。
他人事ながら心配になり、amazonで本書を見てみたら、評価数が2桁あり、さらに発売から2ヶ月経つのにランキングも悪くありません。
そこそこ売れているようで、ホッとしました。
東日本大震災の後もしばらく仕事がなく、奥さんの収入で生活していたようですが、根が楽観的な方のようで、のんびり過ごしていたそうです。
今回は印税もあることですし、つかの間の休息を楽しんで、コロナ禍収束後はまた元気に添乗員を努めて欲しいものです。


リクエスト受付中です!
記事下のコメント、お問い合わせフォームツイッターのDMなどで、お気軽にご連絡ください。