『漁港の肉子ちゃん』読めば必ず元気になる本
底抜けのお人好しは尊くさえある
ダメ男たちに騙され続け、北陸の漁港に流れ着いた母子。
漁港の焼肉屋で働く母親は、太っているため「肉子ちゃん」と呼ばれています。
肉子ちゃんは美人ではなく、センスも悪いですが、底抜けにお人好しで豪放磊落な性格をしています。
小学5年生の娘のキクりんは、肉子ちゃんとは正反対で美人で大人しく、人を傷つけるよりは自分が傷ついた方がいい、と考える性格をしています。
肉子ちゃんは惚れっぽい。しかもダメ男限定で。
思春期の娘をおもんぱかってか最近は大人しかったのに、キクりんは新しいダメ男の存在を感じ取ります。
キクりんはキクりんでこの年頃の女子特有の派閥争いに巻き込まれ、自分の醜さを自覚したり、仲直りをしたり、東京から来た写真家に淡い憧れを抱いたり。
小さな漁村での何気ない日常を描いているのですが…
終盤で肉子ちゃんとキクりん母娘の過去が明らかにされます。
ダメ男にばかり引っかかり、彼らの尻拭いをしてきた肉子ちゃん。
誰の言うことも言葉通りそのまま信じ、何回利用され裏切られても怒らず、おおらかな肉子ちゃん。
まさかここまで徹底しているとは…
読後は、肉子ちゃんのパワーに圧倒されつつも、家族愛がじんわりとくるお話でした。
表紙はクリムトの『ダナエ』です。
ダナエはギリシア神話の女性です。
アルゴス王アクリシオスは、娘のダナエが産む孫に殺されると言う神託を受け、ダナエを塔に閉じ込めます。
しかし美しいダナエを神々の王ゼウスが見初め、ゼウスは黄金の雨になって塔に入りダナエと交わり、息子ペルセウスが生まれました。
表紙は、足の間に黄金の雨が流れ込んでいるクリムトの『ダナエ』を著者の西加奈子さん自身が模写した絵です。
この絵を題材に選んだのは、なぜなのでしょう?
母親にとってのキクりんは、「神からの授かり物」のような存在だからこの絵を選んだのかなと感じました。
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