『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』書評:今までの常識を覆す内容
MMT(現代貨幣理論)はトンデモ学説でないことはわかったけど…何か落とし穴があるような気がしてならない
なぜ日本は低成長が続いているのか。
「失われた10年」がいつしか「20年」になり、ついに「30年」になってしまった今、日本がとっていた経済政策が誤っていたことは自明です。
では、何が悪かったのか、どこを間違えていたのか、どうすればよかったのか。
それに答えてくれるのが本書です。
政治思想を専門とする評論家、中野剛志さんが、最近話題の現代貨幣理論(MMT)について、経済初心者にもわかりやすく書いた本です。
初めて税金の役割や、日本の国債の利率が低い理由に納得できましたが…
日本の低成長の原因
日本の低成長の原因は、長く続くデフレ。
デフレ下では個人や企業は支出を減らす。
その判断自体は正しいが、経済全体で見ると需要の縮小を招き、デフレが続いてしう。
このように個々の判断は正しくても、マクロで見ると好ましくない結果が生じる「合成の誤謬」に陥ってしまっているのが日本である。
そして日本は失われた30年で、デフレ下にありながら所得税の累進度を弱め、法人税率を下げ、逆進性の消費税を上げるという最悪の組み合わせを行なった。
その結果、個人はお金を使わなくなり、企業は内部留保を溜め込み、市場にお金が出回らなくなり、デフレを奪格できないという、まさに「合成の誤謬」が起こってしまっている。
デフレに陥っているということは、財政赤字は大きすぎるのではなく、むしろ少なすぎる。
このデフレと財政赤字の関係が、大学で経済学15点で落とした私には難しすぎてよく分かりませんでした。
国の財政と企業の決算は裏表の関係で、景気がいいと国の財政は黒字になる一方で、企業は設備投資をガンガンするので赤字になる。
景気が悪いとその反対になるということらしいのですが…、読解力に自信がありません。
財政赤字と国債
財政赤字が少なすぎると言われても、素直にはうなずけません。
そうでなくても日本は予算に対する国債の割合が高く、財政破綻するのではないかという懸念の声があります。
ですが著者の中野剛志さんは、政府には通貨を発行する能力があるので、政府の借金は、個人や民間企業とは根本的に異なり、自国通貨建ての国債は、返済不能に陥ることはない、と言います。
アルゼンチンなど財政破綻に陥った国は外貨建て国債の債務不履行であり、ギリシャやイタリアが財政危機に陥ったのは国債がユーロ建てだったためだそうです。
自国通貨建て政府の借金は完全に返済しきる必要はなく、「借り換え」を永久に続ければ破綻することはない。
ほとんどの先進国において、国家予算に計上する国債費は利払い費のみで、償還費を含めているのは日本くらいのものなんだとか。
私たちの代に作った国の借金を、子供たちの代に持ち越すのは心苦しいので、本当にこの説が正しいのなら安心なのですが。
税金を徴収する理由
無税国家があり得ないのは、無税国家にするとハイパーインフレになってしまうから。
税金を徴収することにより需要を縮小させ、インフレを抑制する働きがある。
インフレを抑えたければ投資や消費にかかる税を重くする。
逆にデフレから脱却したければ、投資減税や消費減税を行う。
つまり、税金とは物価調整の手段であり、財源確保の手段ではない。
日本では、1997年、2014年、2019年に消費増税を行い、デフレ脱却を頓挫させた。
物価調整以外の税金の役割としては、例えば炭素税を導入することにより二酸化炭素の排出の抑制の手段となる。
所得再配分の役割もある。
富裕層の所得や贅沢品の消費には課税をより重くし、貧困層の所得や生活必需品の消費に対しては非課税あるいは軽い税率とすれば、所得格差が是正され、需要を生み出し、デフレの克服に一役買う。
しかし日本政府はデフレ渦中で所得税の累進度を弱め、法人税率も下げ、消費税を上げるという真逆の経済政策を行なった。
その結果、デフレが続き、企業は内部留保が過去最高となり、個人消費は伸び悩んでいるという最悪の結果を招いている。
この理論が正しいのであれば、今すぐ消費税を廃止し、所得税、法人税を上げて欲しいですね。
日本は所得の再分配により貧困がさらに増大するという稀有な国です。
税制や社会保険料の制度が誤っていることは明らかです。
一刻も早く是正してもらいたいものです。
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