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『きみの世界に、青が鳴る』のラストがモヤモヤした理由を全力で考察

七草はヒモになることを選んだ

ネタバレあり、および主人公をディスっているのでファンの方はご注意ください

階段島シリーズ最終巻『きみの世界に、青が鳴る』を読み終え、最終的に七草がとった行動に対して、非常にモヤモヤしました。
なぜここまでモヤモヤするのか数日考えて、自分なりの答えが出ました。

それは、
七草は、堀のヒモになったから。
今後もずるいヒモ男の言い訳をしながら生きていくであろうから。

便宜上、小学3年生の時に堀によって引き抜かれた七草を七草①、7年後に引き抜かれた七草を七草②、七草①と七草②が統合した七草を七草③とします。

七草③は、現実の七草が魔女の理想を否定するために一旦は「拾われ」ました。
しかし、あらかじめ堀に頼んでおいた通り、七草③は再び階段島へ戻ってきました。
その後、真辺由宇や堀、安達、時任らと協力(?)し、大地を現実世界へ帰しました。
その2年後、前触れもなく真辺由宇は現実世界の真辺に拾われ、姿を消しました。
さらに6年ほど後、真辺由宇と結婚した現実の七草が、七草③に拾われる意向があるか確かめに来ますが、七草③は階段島に残ります。

この時、七草③は拾われても良かったんです。
なぜ拾われなかったのでしょう?
七草③としての理由は、こんなところでしょう。

自分は魔女としての堀と、ピストルスターとしての真辺のどちらも愛している。
ピストルスターとしての真辺を愛しているのだから、そばにいなくても存在を感じていられるだけでいい。
現実世界の自分と真辺が幸せだろうと自分には関係ない。勝手に幸せになればいい。

七草③がピストルスターとしての真辺だけを愛しているのなら、モヤモヤ感はなかったと思います。
問題は、七草③は魔女としての堀を愛しながら、ピストルスターとしての真辺由宇を愛していることです。
そもそも七草③は、七草①と七草②が統合した存在です。

堀が現実の七草から再び引き抜いた時に、七草①だけを引き抜いても良かったのです。
そうしなかった理由は、2つ考えられます。
一つは、大地の信頼を得ていたのは七草②であったから、大地に関わるためには七草②、もしくは七草②が主人格となっている七草③である必要があったから。
そしてもう一つは、統合されてしまったら自分を引き抜いて欲しいと頼んだのが、七草③であったからです。

堀のルールを厳格に適用するのなら、いかなる理由があっても現実の人格が捨てた人格を拾いたいと願ったら戻さなければならないのですから、緊急避難的に再度引き抜いた人格は、引き抜く理由が消滅した時に返さなければなりません。

返さなかった理由はただ一つ。
堀には七草が、できれば七草①が必要だったからです。

そして七草③は、そこに付け込んだのです。
七草③が本当に堀に対して誠実なら、「何も捨てないなんてことは可能だろうか」とグダグダ悩まずに、七草②を現実の七草に戻し、七草自身が魔女の呪いをかけた堀を誠心誠意支えていくでしょう。

ですが七草はそうしませんでした。
機会は十分にありました。
真辺由宇が拾われた時、七草③は非常に悲しみ、堀はそれに対して負い目を感じています。
もはや七草②の役目は終わっているので、ここで②が戻るべきでした。
現実の七草が意向を確かめに来た時もチャンスでした。
あの場で七草③が、②だけ戻るよう頼めば、堀は応えてくれたことでしょう。
しかし七草②は戻ることを望みませんでした。
なぜでしょう?

それは、階段島でのぬるま湯のような生活が心地よかったからではないでしょうか?
階段島には受験勉強もなく、生活のためにあくせく働く必要もありません。
全ては魔女によって不自由なく生活できるようにコントロールされています。
そもそも七草①に至っては、小学3年生以降学校にもいかず、働きもせず、生活全般を堀の魔法に頼りきっていました。
現実の七草と七草②は、小学1年生の大地を母親の元に帰そうとずいぶん骨を折っていましたが、七草①は小学3年生で家族を捨て、少女と2人で暮らしていたような人間です。
小学3年生で万能の魔法を使える少女と一緒に生活し、一つの世界を一から作り上げ、責任は全て少女のもの。
捨てられた人々が現実世界の家族にクリスマスプレゼントを送ろうとしているのに、自分のせいで届けることができないと毎年心を痛める少女に出した解決策は、「インターネット通販を使えなくする」という非常に荒っぽく、子供じみたものでした。
さらに七草①は少女の心は思いやっていたものの、捨てられた人々の方には全く寄り添っている様子はありませんでした。
このことからも、七草①は階段島の構築などに口を出すものの、自分には責任がないと考えていたと伺えます。

七草③は真辺由宇への愛情を抱いたまま堀と生活し、堀の罪悪感を利用して階段島に住み続けるのでしょう。
生活の苦労もなく、成長もない世界で。


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