<!-- もしもアフィリエイトでかんたんリンクを貼る時、 レスポンシブを有効にするためのタグ-->

『サクッとわかるビジネス教養 地政学』全く新しい視点で世界を読み解く

地理的要因で国の立ち位置が決まる

学生時代、地理が苦手でした。
大学生になり、海外旅行であちこちの国を訪問すると、意外な国が親日国だったり、「他国に入国の際に差し障りがあるから」と入国スタンプを押さない国があったり、急な日程変更の時に同じツアーの中国国籍の人たちはビザが取れず観光できなかったりと、国と国との関係性を肌で感じるようになりました。

地理がわかると海外旅行に役立つよね、と思い、歴史や政治の情報が盛り込まれている地図帳を眺めたり、「地理で読み解く〜」系の本を読んだりして自分なりに理解を深めていきましたが、どうしても知識が断片的で、単なる情報にとどまっていました。

『サクッとわかるビジネス教養 地政学』は、「国の振る舞い」を地理的な観点から読み解いた本です。
アメリカと中国が対立している理由、ロシアのクリミア併合の意味、ISの崩壊にも関わらずシリア内戦が長く続いている理由、緊急財縮案を拒否したにも関わらずEUがギリシアに金融支援した理由が、「地政学」の視点で見ると、すんなり理解できます。

それもそのはず。「地政学」は”学”とあるように、れっきとした学問で、ちょっと頭のいい人が自分の解釈で書いた本とは違い、根拠がしっかりしているのです。

地政学は、地理的な環境が国家に与える政治的(主に国際政治)、軍事的、経済的な影響を、巨視的な視点で研究するものである。
(中略)
歴史学、政治学、地理学、経済学、軍事学、文化学、文明、宗教学、哲学などの様々な見地から研究を行う為、広範にわたる知識が不可欠となる。また、政治地理学とも関係がある。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

図解やイラストを多用しているので、私のように初めて「地政学」に触れる人にも「サクッとわかる」ようになっています。
欲を言えば、国の関係性を表すイラストで、国の表情だけでは少し分かりにくいので、せっかく多色刷りなのだから色分けにも気を使って欲しかったです。

「ランドパワー」と「シーパワー」

最も目からウロコだったのが、「ランドパワー」と「シーパワー」の概念でした。
「ランドパワー」とは、ユーラシア大陸の、他国と国境を接している大陸国家で、「シーパワー」は国境の多くを海に囲まれた海洋国家のこと。
ランドパワーの国がさらなるパワーを求めて海へ進出すると、テリトリーを守ろうとするシーパワーの国と衝突する、という歴史を繰り返しているそうです。
意外なのは、アメリカが「シーパワー」に分類されること。
アメリカの周囲には拮抗する勢力がないため、アメリカは地政学的には1つの島なのだそうです。
そう考えると、アメリカと中国の対立も、中国が海洋進出を始めたから、シーパワーのアメリカが抵抗していると解釈できます。

著者の奥山さんは、歴史的に見るとランドパワーとシーパワーが交互に力を持ってきたと言います。
10〜15世紀の航海技術が未発達な時代は、ランドパワーが優位。
15〜19世紀の大航海時代以降は、スペインやイギリスが世界を席巻し、シーパワーが優位。
19〜20世紀後半に鉄道が敷設されると、陸上交通が海上交通と同等の物流能力を得てドイツやロシアが台頭し、ランドパワー優位。
20世紀後半〜は、アメリカとその支援を受けた日本が台頭し、シーパワー優位。

そしてこの後は、新型コロナウイルスの流行により、国境封鎖などによりグローバリズムの流れが一時的に後退。
グローバリズムはシーパワーの土台のため、ランドパワーの勢力が強くなり、特に人口が多く、ある程度自国内で経済を回せる中国のさらなる躍進を遂げると予想しています。
ただしコロナ禍後5〜10年後には、ウイルス流行以前に影響力のあったシーパワー勢力が戻ってくると予測しています。

新型コロナウイルス後の世界経済の予測については様々な人が意見を述べていますが、経済系の人は「日本一人勝ち」とか、「日本が世界のリーダーになる」とか、なんの根拠もない楽観論ばかりで、全く参考になりません。
「地政学」による「中国の台頭⇒10年後にシーパワーの復活」という予想の方が、腹落ちします。

中国の一帯一路と海洋進出

中国は近年、尖閣諸島周辺を航行したり、南シナ海の南沙諸島に人工島を建設したりと、海洋進出を始めています。
その理由は、経済発展により戦費に余裕ができ、さらに周辺諸国と国境を確定することにより、戦力を国外に使えるようになったからだそうです。
子供の頃は、国境が定まっていないのは日本とソ連(当時)の北方領土問題くらいで、例外的なものだと思っていたのですが、実は地続きの国家間でも国境が定まっていないところは想像以上に多いそうですね。
世界地図を見ていると、インドと中国の国境など、複数の箇所で国境が点線で書かれている部分があります。
中国は1960年代から近隣国との国境を固め始め、ほぼ全ての国境が画定し終えたため、海に進出する余力ができたようです。
グーグルマップで確認すると、まだ結構点線の部分がありますが、これでもだいぶ減ったのでしょうね。

ともかく、中国は尖閣諸島などを実効支配し、領土を広げようとしているようですが、「地政学」的に見ると、これは無理な計画なようです。
その理由として、
①歴史上ランドパワーとシーパワーを両立させた国はない
②中国の海洋進出の考え方は陸の考え方で、海の考え方ではないから、
というのですが、どうでしょうか?

そうであって欲しいとは思いますが、これまでランドパワーとシーパワーを両立できなかったのは、それぞれの得意分野が違ったり、ランドパワーの国は国境線を守るのにコストがかかるからだったりするのでしょうが、人工知能が発達すれば様々な問題は解消されて、中国が初の両立国になり得るのではないかなあとも思います。

地政学と新聞

今日の新聞に、ベラルーシ大統領6選の記事が載っていました。
「地政学的」に、ベラルーシはロシアの同盟国で失いたくない勢力圏。欧米にとっては対ロシアの拠点となり得る。とのこと。
今まで気づきませんでしたが、新聞では普通に「地政学」という言葉を使っていました。
そして、「地政学」的に地図を確認すると、ベラルーシの政治的な立ち位置も理解できます。

良い概念を身につけることができました。


リクエスト受付中です!
記事下のコメント、お問い合わせフォームツイッターのDMなどで、お気軽にご連絡ください。