『じんかん』新解釈・松永久秀はなぜ「三悪」を行うに至ったのか?
前半は胸熱展開
「じんかん」は「人間」、「人と人が織りなす間。つまりはこの世」を意味しています。
人間から武士をなくし、戦国時代を終わらせ、人間を民が治める国とする。
そんな理想を掲げる三好元長。
その理想に共鳴し、浮浪児から大名に上り詰めていく松永久秀の物語です。
松永久秀といえば、将軍・足利義輝を暗殺し、主君の三好長慶とその子を暗殺、さらには東大寺大仏殿を焼き討ちし、織田信長をして「常人が成し得ない三つもの悪行を働いた稀代の悪人」と言わしめた人物です。
しかし、その前半生は謎が多く、出自も分かっていません。
本書は、そんな松永久秀の少年時代から死までを描いています。
生きるか死ぬかの少年時代から三好家に取り立てられるところまでは完全なフィクションでしょうが、これが滅法面白い!
どん底の状態から寺に保護され、自らの意思で三好元長に会いたいと願い、彼の理想に共感し、理想の実現のための第一歩を踏み出す。
全500ページのうち300ページを占めるこの前半部分は、胸熱展開で、テンションが上がります。
しかし後半の200ページで、松永久秀が大名にまで出世し、理想に燃えたはずの人間がなぜ「3悪」を行うに至ったか、を説明するには、ページが足りなすぎました。
特に、三好家で出世を重ね、歴史の表舞台に出るまでの経緯が、完全に省略されています。
それこそ織田信長とか秀吉、家康などよく知られている人物なら、成り上がっていく過程を飛ばしても大まかな流れは知っているので問題ないのでしょうが、ほとんど知らない人物でそれをされると、ついていけなくなってしまいました。
三好家で頭角を現していく過程が一番面白そうな部分だけに、残念です。
理想を語り共に夢を見るのは三好元長ではなく、元長の息子の長慶でも良かったような気がします。
長慶の方が年下だから父親の元長にしたのかもしれませんが、史実でも長慶はデキる人物だったようなので、年下でも問題ないような気がするんですけどね。
いかんせん三好元長の退場が早すぎました。
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